皆さん、こんにちは。ロンドン・ファッション・ウイーク(LFW)が開幕しました!ニューヨークで「ドタバタ日記」を綴っていた編集長の村上からバトンを受け取り、私大杉がロンドンコレ取材の裏側を日記にしてお伝えしていきたいと思います。私はこれまで東京、ニューヨーク、ミラノ、パリのウィメンズ・コレクションの取材を経験しましたが、今季初めてLFWに参りました。日記ではロンドンの今や、他都市とのコレクションの違いなどにも触れていきたいと思っています。日記なので1日以上時差がありますが、4日間ぜひお付き合いいただけたらうれしいです。
初日の朝はロンドンコレのキックオフ会見が行われました。主催者の英国ファッション評議会(ブリティッシュ・ファッション・カウンシル/BFC)からの挨拶があり、まずは英国のEU離脱(Brexit)問題について、離脱に伴う輸出入取り引きへの影響やリスクをデザイナーたちと共有し始めて対策しているとのこと。また今LFWが力を入れているのが“ポジティブ・ファッション”です。サステイナビリティーを意識したモノ作りをはじめ、多様性と平等性の尊重、職人技とコミュニティーの保護など、一言で言うと“世の中へ良い影響を与えるファッション”を発信することです。モデルとして活動しながら、アクティビストで“ポジティブ・ファッション”のアンバサダーも務めるアジョア・アボアー(Adwoa Aboah)がスピーチを行いました。私は個人的にアジョアの大ファンなので、彼女のスピーチを生で聞くことができてとてもうれしかったです。アジョアの魅力については、また後日どこかで記事にできたらと思います。
トップバッターはニットウエアを得意とする「マーク・ファスト(MARK FAST)」。LFWのメイン会場である”180 ザ ストランド(通称ワンエイティー)”でショーを発表しました。目が覚めるネオンカラーに、ボディコンシャスでタイトなニットドレス、フリンジはどことなくチアリーダーのポンポンのようです。モデルにはプラスサイズモデルも起用しています。NYコレのように分かりやすい表現ではないですが、多様性を重んじていて、早速“ポジティブ・ファッション”を感じました。
台湾人デザイナーの「ジェイミー ウェイ ファン(JAMIE WEI HUANG)」のショーに向かうため、会場の外に出るとカメラを持ってスナップハンターをしていたファッションジャーナリストの宮田理江さんにばったり!宮田さんは「WWDJAPAN.com」のリアルトレンドのマスターとして、トレンド解説の記事でおなじみです。私は宮田さんを逆にスナップし、素敵な笑顔をいただきました。
「ジェイミー ウェイ ファン」のショーでは、全面にビーズを使ったブラトップやバッグが気になりました。この“ビーズ使い”はこの後も出てくる一つの傾向になっていきます。ショーのフィナーレにはバックステージからスタッフが登場し挨拶。ロンドンにアトリエがあるブランドですが、全員アジア人ですね。
メイン会場のワンエイティーに徒歩で戻り、「ネンシ ドジョカ(NENSI DOJAKA)」のプレゼンテーションをチェック。真っ暗闇で、黒とベージュのアンダーウエアとミニドレスを着たモデルたちがポーズを決めています。自撮り棒を持って撮影しているのもシュール。この手のプレゼンテーションは出入りが自由で、5分見て会場を去ります。
BFCに用意していただいたベンツの車で会場移動をスタート。「16アーリントン(16ARLINGTON)」はライブ会場で、ダンスパーティー風のプレゼンテーションを開催。1920年代のフラッパーのようなフリンジドレスから60年代風の色あざやかなミニドレスまで登場する時代をミックスした華やかでギラギラな世界観です。音楽に合わせて踊っているモデルたちがとても可愛い!
メイン会場に戻り、「エフティシア(EFTYCHIA)」のプレゼンテーションに入場。BFCの若手育成プログラム「ニュージェン(NEWGEN)」に選ばれた注目デザイナーとして、モデルによる発表を行いました。2019年度のLVMHプライズのセミファイナリストにも選ばれていたブランドです。先ほど「ネンシ ドジョカ」も使っていた空間に、デスクなどを足してオフィス空間を作っていました。テーラードを中心にゆったりとしたスーツを着たモデルたちが登場しました。
「ニュージェン」と言えば、「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」や「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」を輩出した若手育成の登竜門。プレゼンテーションが行われていた隣の部屋では、今「ニュージェン」がサポートするウィメンズ10ブランド、メンズ10ブランドの計20ブランドの19-20年秋冬ルックが1体ずつ並んでいました。私みたいにLFW初心者にとっては、先にブランドを予習できるありがたいスペース。是非東コレでも取り入れて欲しいです。マネキンの隣のプレートには、それぞれのブランド名とともに”ポジティブ ファッション”の一環で、どんなことに注力をしているのかが解説されています。例えば、プリント技術で「リチャード クイン(RICHARD QUINN)」はサステナビリティー、「マティ・ボヴァン(MATTY BOVAN)」は職人技とコミュニティーなど、今はただ素敵なコレクションを作ればいい時代ではないことがよく分かります。
メインのショー会場に戻り、「ボラ アクス(BORA AKSU)」のショーを見ました。20世紀初頭に女性の権利を求めるために活動したフェミニストであり、ペルシャ王宮のプリンセスだったタージ・アッサルタネ(Taj Saltaneh)が着想源になっています。フリル、小花柄、赤チェックなど、少し日本ガーリーの「ピンクハウス(PINKHOUSE)」や「ミルク(MILK)」に通ずるスタイルを感じました。スタイリングは、雑誌「ルラ(Lula)」元編集長で「ヴァイオレットブック(Violet Book)」を手掛ける有名スタイリストのリース・クラーク(Leith Clark)が担当しています。
今回は珍しくLFW非公式のオフスケジュールでショーを発表した「キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)」の会場へ。会場には今季の着想源の一つにもなっている英国人アーティストのロージー・グレイス・ワード(Rosie Grace Ward)による大きな2つの鉄彫刻がドーンと並んでいます。日本でもメンズに人気ですが、ウィメンズの過去2シーズンは少々作品作りに比重が傾いていて、リアルな一般女性が着用できる印象がありませんでした。しかし、今季は少し“衣装感”が薄れて(まだありますが)、ウエアラブルになったと感じます。渦巻きのワンピースやトップス、アンモナイト型のポシェットなどもかわいかったです。詳しいミニレポートはこちらでチェックくださいませ。
若手の合同ショー「ファッションイースト(FASHION EAST)」をチェックしてきました。中国人デザイナーのユハン・ワン(Yuhan Wang)は2週間前に日本のファッション展示会イベント「ルームス(rooms)」に出展していて、デザイナーにも会ったばかりでした。セント・マーチン美術大学を1年前に卒業したばかりですが、すでにドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)やLAのH.ロレンツォ(H.LORENZO)などで扱われています。「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」や「モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)」などのロンドンの次なる“ガーリー枠”となるか期待です。
メイン会場ワンエイティーに戻り、「ドム セバスチャン(DOM SEBASTIAN)」のプレゼンテーションへ。得意とする色鮮やかなグラフィックプリントを使ったコレクションを発表しています。同様のプリントを施した壺などの大道具の作りも凝っています。
「マティ・ボヴァン」のショーへ。種々雑多な生地を掛け合わせた造形的でダイナミックなコレクションです。横から見ていると分からなかったのですが、ショー終了後にルックを確認すると、モデルたちが付けていた反射板のような特殊なマスクは、顔を歪んで見せていたことが分かりました。改めて見ると本当にカオスです。スタイリストは「ラブ(LOVE)」マガジンの編集長で、「プラダ(PRADA)」などのショーも手掛ける有名スタイリストのケイティ・グランド(Katie Grand)でした。
「ポーラ ノア(PAULA KNORR)」のショーは英老舗百貨店、ハーヴェイ・ニコルズ(Harvey Nichols)のレストランで行われました。ラズベリー入りのカクテルをいただきながら、ビジューや刺しゅうがたっぷりあしらわれたドレスを拝見。イブニングドレスブランドではありますが、ドレスの共布で作ったミニポシェットを合わせたドレスルックは、少し新鮮でかわいかったです。
車でワンエイティーに戻り、ドイツ出身デザイナーの「マルタ ジャクボウスキー(MARTA JAKUBOWSKI)」のショーへ。1998年のドイツ映画「ラン・ローラ・ラン (Run Lola Run)」の主人公のローラのタフな女性像が着想源になっていました。劇中の挿入歌「Believe」をBGMに、角ばったショルダーラインのジャケットやフェイクレイヤードのパンツなどが登場します。日本でも感度の高い人たちに支持されているショルダーラインを変形させたキャミソールやトップスは引き続き提案がありました。
初日のラストストップは、老舗セレクトショップのマッチズ(MATCHES)で行われた「0 モンクレール リチャード・クイン(0 MONCLER RICHARD QUINN)」の発売を記念したローンチパーティーです。コレクションのプリントを用いたソファーが用意されていて、来場者たちが自由に撮影を楽しんでいました。特にコラボダウンコートを掛け布団にして寝っ転がって写真を撮っている子たちがキュートでした(笑)。会場のマッチズは最近、ファッションECの「マッチズファッション ドットコム(MATCHESFASHION.COM)」から知る人も多いですが、ロンドンの老舗セレクトショップです。時間があれば店内をゆっくり見たかったのですが、終了時間ぎりぎりに滑り込んだため断念しました。またゆっくり見にきたいと思います。
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